雲を発明した人 ― 2026年06月21日 16時23分28秒
前回、雲についての本を紹介し、「層雲・積雲・巻雲」という名称に触れました。
この3分類を考案したのが、英国人ルーク・ハワード(Luke Howard、1772-1864)で、このところずっと彼の伝記を読んでいました。
■リチャード・ハンブリン(著)、小田川佳子(訳)
雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者
扶桑社、2007 (原著出版は 2001)
雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者
扶桑社、2007 (原著出版は 2001)
雲というのは古来、不定形なものの代表です。
その形は常に変化し、永続性もなく、どこからともなく現れて、どこへともなく消えていく存在です。そんなものに、果たして名前を付けることができるんだろうか?…と私なら思ってしまいます。
でも、ルーク・ハワードは紛れもなく天才だったので、実際にそれをやってのけました。それが「層雲・積雲・巻雲」の基本分類であり、そこに存在する高度差(低層・中層・高層)への注目でした。これは、あらゆる近代科学の根幹にある「現象の背後にある本質的要素を見抜く」ことの好例だと思います。
そして、この本が描くのは、単に一人の科学者の伝記にとどまらず、その背後にある雲の科学の長い前史と、18世紀末~19世紀初頭のイギリスの文化史的状況、すなわち科学の大衆化と、「娯楽としての科学」の爛熟です。後者については、天文学も似たような状況にあったので、そのことを考え合わせて大変興味深く読みました。
★
時の利と地の利を得て、才能を開花させたルーク・ハワード。
もちろんハワード以前から、気温・気圧・風向・風力等の気象観測データの集積は始まっていましたが、そこには「天候そのもの」を記述する語彙が欠けていました。その最後のピースが埋まったことで、近代気象学は急速に発展を遂げたわけで、もし彼がいなかったら、気象学の歩みは今とはずいぶん違ったものになっていたでしょう。
(…と前置きした上で、本の右下に置かれた黒いものに注目してみます。この項つづく)

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